「20世紀最悪の大虐殺」経験したルワンダ 万博で伝えたい思い: 毎日新聞
暴力や差別を乗り越え、和解と共生の道を歩もう――。アフリカ中部のルワンダは、そんな強いメッセージを携えて大阪・関西万博に参加している。31年前、ルワンダが経験した大虐殺という悲劇を二度と繰り返さないようにという一心で、会場内の展示やイベントを通じて世界に訴える。憎しみや分断の先に未来はないことを。
国民の10人に1人が犠牲に
1994年、当時の政府軍やフツ系過激派らがツチ系住民を襲撃。わずか3カ月で80万~100万人が殺害されたとされる。20世紀最悪の大虐殺(ジェノサイド)の一つとなった。 旧宗主国ベルギーによる分断統治が背景にある。両者とも同じ言語や文化的背景を持つが、ツチを優遇しフツを差別した。62年の独立後、フツが政権を握ったことでツチを迫害するようになり、内戦に至ったとされる。大虐殺で国民の10人に1人が犠牲となり、国の再建と和解が急務となった。加害者は「ガチャチャ」と呼ばれる地域社会の法廷で裁かれ、服役や公益労働などを経て、再び同じコミュニティーで社会復帰が図られた。復興のため、政府は経済改革や観光業の振興を図り、教育や公共サービスのデジタル化、女性の社会進出を推進。その結果、著しい経済成長を実現し、「アフリカの奇跡」と称される。
万博会場で追悼式も
万博では複数国が同じパビリオン内に出展する「コモンズ」に展示ブースを設け、豊かな自然や産業などを紹介。草や麻を手編みしたかごや花瓶などの伝統工芸品が並ぶ。大虐殺で家族を失ったツチとフツの女性たちが共に家計を助けるために製作したことから、「ピースバスケット」と呼ばれ復興の象徴とされてきた。また例年は東京のルワンダ大使館で開いていた大虐殺の追悼式を、今年は5月に万博会場で開催した。式典には生存者のクラベール・イラコゼさんが登壇。当時11歳だったイラコゼさんは父親を殺害され、ほどなくして母親も亡くした。トラウマに苦しみ、どのような人生を送ればよいか悩んだこともあったという。父となり、自身と同じような子どもが二度と生まれないように、絵本で大虐殺を伝える活動を続けている。「私は憎しみの恐ろしさを知っている。ジェノサイドは人道に対する罪で、ルワンダだけでなく人類全体に起きた悲劇。決して忘れてはいけない」と訴えた。
勇気を持って過去に立ち向かう
大虐殺終結を記念する7月4日には、万博の参加国が日替わりで自国の文化を紹介する「ナショナルデー」を開催。ルワンダ国立バレエ団が伝統舞踊を披露し、困難を乗り越え未来に向かう姿を表現した。 万博開催をきっかけにルワンダと交流を重ねてきた大阪市立大江小の児童たちも参加した。6年の後藤大貴さん(11)は「ルワンダで起きたジェノサイドの歴史を知り、争いのない国で生まれ育ったことは特別なことだと実感した」と話した。 万博への参加は2021~22年のドバイに次いで2回目となるルワンダ。 マリー・クレール・ムカシネ駐日大使は「復興と和解の道のりは困難を極めたが、勇気を持って過去に立ち向かい、二度と悲劇を繰り返さないと誓った時に何が可能となるか。ルワンダの成長は、その証しでもある」と語る。 今も世界各地で戦火がやむことはない。ムカシネ大使は「平和がなくては未来を築くことはできない」と強調した。
【田中韻】
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